#ジョカゲ短歌
棺は閉じ手探りで漕ぐ花筏この世の果てはうつくしいのか
葉脈を透かせば青き血潮にていずれ知る絶えるだろう、赤
悼み痛む胸のおくに佇んで声をかければ猫かと惑う
また巡り、春 寒々と枝拡げ桜は散りてなお青を抱く
薄紅の花ふり落ちて影は消えその手触りを忘れまいとす
「花筏」(「柩」によせて・さくみよ)
ソーダ水くちづけてなお赤い首一人知るn回めの夏だ
今だけの熱に歪む横顔の角度が記憶の影に等しい
つぎはぎの夏、カリと爪を噛む いびつな曲線そのままのきみ
染まりゆく茜の頬のかたがわに滲んだ影が僕であること
もうこの手にはなにもないよとがらんどうの手と手で虚無を埋める
(じついくんとはたのくん・転生)
my name is your name ... 忘れたな 伏せたまつ毛と揺れるゴースト(波多野)
うつくしいけものみたいな目をしてる(そうかな?)わらうきわの白き裸身(神永)
世界などカードとなにも変わらない 包んで切って、「3.2.1」(田崎)
熱風を頬に受けとめ煌めきと人の波間と虚空を見上げ(福本)
亜麻色を指で掬えばほころんだ 幼き日々のひかりは在らず(甘利)
雪原の足跡(そくせき)を消し 魔王の足もとにいまは頭(こうべ)を垂れる(小田切)
照準を合わせたつもりはないけれど 的(まと)と“僕”を守っただけ(実井)
白肌の百合の花の香ふさわしく(貴様は誰だ?)黙して眠る(三好)
化け物の皮を被ったヒトだから ヒトでないから 我は化け物
「我は化け物」
円環の鎖で結び手首ごと 引きずり上げて小指を切った
瀬戸に立ち微睡む顔の幼さに 夜明けをつげる耳鳴り、一つ
まるでゆめみたいですね 今生の淵をさ迷う気分はいかが?
きん色の瞳で空を仰ぎゐる 「なにかが見える?」「いえ、なにも」
焔、消して伸ばす指掴むあたたかさの主の頬の清き朱(あか)
マーブルに溶けてゆくゆめだ カフェ・オ・レを飲み干して横顔のきみ
「ゆめの裂けめ」(さくみよ)
白色の記憶を喰べて味わった 骨の髄まであいしてあげる
舞い上げて 散らして落ちて 紅の花ほどの潔さなどなく
「明日また、会えたら」そんなゆめを見る この現世は無明でしょうか
雷鳴とラムプと煙草とさきほどのくちづけだけがわたくしの、愛
煙る背に投げつけたのは紫煙だけ 追いかけてなお 素知らぬあなた
生きるほど、生きてゆくほど罪の降る 口笛の音響く廊下に
常闇のエデンで息を殺してる わたしはあなたの心がほしい
「わたしにあなたの心をください」(さくみよ)