『冷めない紅茶』――小川洋子 Category:murmur Date:2017年02月28日 小川洋子『冷めない紅茶』を読みました。生まれてはじめて小川洋子ときちんと向き合ってみたのだけれど、あまりにもよく、感銘を受けた。食わず嫌いだったことをつくづく思い知った。高名な作家ゆえにどうにも手が出なかったのだけど、twitterでフォローさせて頂いているかたがおすきと知り、ミーハー根性まる出しで手に取ってみたら私の知らない世界が拡がっていて目から鱗、この人こんなもの書くのか!!ってゆう衝撃の嵐。このとしになってようやく、で恥ずかしいのですけど。『冷めない紅茶』、表題作と『ダイヴィング・プール』の二篇収録の中編小説で、私はとくに『ダイヴィング・プール』が衝撃的で、圧倒されて、深夜にう、う、うわーっ!!て声が出るかと思った。筆致としては、うつくしいメタファでことばとことばを繋ぎ、それにブレがない。素晴らしい。たとえば『ダイヴィング・プール』で、水をベースにそこに飛びこむ純や純の肉体や空気のさわやかさや“わたし”の濁ったこころのうちを描いていたり。ある意味で完璧な小説、と思った。そしていずれもきよらかで清潔な文章なのに、胸を掠めるようなひりひりとした痛みを誘ってくる。これが小川洋子かと。その、twitterでフォローさせて頂いているかたが彼女の何に魅了されたのか、この一冊である程度理解できた。なるほど、と思った。表題作『冷めない紅茶』は、日常に隣り合っている死を、『ダイヴィング・プール』はどうすることも出来ない生の淋しみをそれぞれ描いていて、いずれにしてもひたすら厳かに淡々と結末に向かっていく、しずかなお話だった。だというのに、読後に「なにこれ?」ってゆう異和感を与えてくれる。あたたかで透明な光の差す往来で、意味不明のことばをしゃべる人間に話しかけられ理不尽に呶鳴られた、みたいな非日常感と心細さ。久しぶりによい作品に出会えた昂奮と、今まで知らなかったことへの軽い後悔と、これから読む楽しみが出来たとゆう歓びが綯い交ぜになってうまく文章が書けない。読書感想文がじょうずに書ける人間になることが今後の目標の一つになりました。 PR